核酸医薬について

たんぱく質の形成プロセス
人体は37兆個の細胞からできていると言われており、全ての細胞には核があり、46本の染色体が収納されています。染色体は30億のDNA塩基配列(A,T,G,C)があり、DNAが設計図となり、RNAへ転写され、たんぱく質が作られます。人体を構成する水65%に次いでたんぱく質は15%あり、細胞内・外で身体を構成する成分、酵素の成分になっています。


異常なたんぱく質
遺伝子が変異し(例:DNAにおいて本来は“G”である部分が“C”になっている。)、その変異がmRNA前駆体、mRNAへと伝わり、あるべきコドンが形成されないで、目的とするアミノ酸を指定できないことが発生します。(例:AUG:はメオチニンMetを指定しますが、AUCになった場合はイソロイシンを指定します。)その結果、異常な配列のたんぱく質が形成されることがあり、そのたんぱく質が生体機能の異常の原因となります。
遺伝子に異常がない場合でも、mRNA前駆体への転写時に異常が発生してしまう場合や、スプライシングが適切に機能しない場合等があり、その結果異常なmRNAから異常なたんぱく質が形成されることがあります。

核酸医薬の機能
核酸とはDNA(デオキシリボ核酸)とRNA(リボ核酸)の総称ですが、核酸医薬は、核酸を直鎖状に結合させて医薬品にしたものです。核酸医薬には、mRNAを標的するもの、たんぱく質を標的にするものがあります。また、異常なたんぱく質を無くすもの、多すぎるたんぱく質を減らすもの、少ないたんぱく質を補うものがあります。

他の医薬との比較

核酸医薬は低分子医薬、抗体医薬とは異なる性質を持っており、従来ではターゲットにできなかった疾患への治療薬として期待されています。

低分子医薬
主に受容体や酵素を創薬ターゲットにしており、分子量が1,000未満(多くは500程度)の医薬品で、化学合成で作成されます。

抗体医薬
膜タンパク質や分泌たんぱく質を創薬ターゲットにしており、分子量が150,000のため高分子医薬とも呼ばれ、遺伝子組換えで作成されます。培養した抗体を培養液から抽出し、ウィルスを除去・精製し、乾燥凍結させて製剤化します。

遺伝子治療薬
正常の遺伝子を導入して、遺伝子異常を修復する(狭義の遺伝子治療) 、遺伝子を導入して行う治療(広義の遺伝子治療)を言い、遺伝子発現を介して作用し、生物学的に製造するものです。

核酸医薬

mRNA、miRNA、たんぱく質等を創薬ターゲットにしており、ヌクレオチド(核酸塩基+糖+リン酸)を基本骨格とし、遺伝子発現を介さずに直接生体に作用し、化学合成で作成されます。弊社が開発するアンチセンスは分子量6,000~9,000、siRNAは分子量14,000程度で中分子医薬とも言われ、細胞内、核内で機能します。

核酸医薬の種類と特徴

たんぱく質への作用
疾患の原因となるたんぱく質をなくす、RNA分解型アンチセンス(Gapmer)、siRNAがあります。
機能的なたんぱく質を発現(再機能)させる、スプライシング制御型アンチセンス、miRNA阻害型アンチセンスがあります。
弊社ではアンチセンス(Gapmer型、スプライシング型)とsiRNAを開発しています。

疾患領域
非コードRNA、ウイルスRNAも含めた全RNA分子を創薬対象とすることができるため、様々な疾患領域で開発できます。

開発スピード
アンチセンスでは13~30程度の塩基長で、天然型DNA、修飾核酸、S化リン酸結合を基本構造とするため、遺伝子配列の情報さえ分かれば、 有効性の高いリード化合物を短期間で開発することが可能です。また、核酸自動合成機で合成できるため、化合物固有の合成経路を必要としません。


アンチセンスについて

基本構造と機能
Gapmer型アンチセンスは、天然型DNA、修飾核酸、S化リン酸結合を基本構造として、標的となるmRNAへ結合し、かつ、体内で安定化するように設計します。
標的のmRNAと結合すると、細胞内にある酵素(RNase H リボヌクレアーゼH)がDNA/RNA結合を認識し、標的となるmRNAだけを分解します。
その結果、異常なたんぱく質ができる前に、その原因となるmRNAを分解し、残ったGapmer型アンチセンスは次の標的mRNAに結合し、分解を繰り返します。


siRNAについて

基本構造と機能

 siRNAとはsmall interference RNAの略称で、 23塩基の二本鎖RNA (dsRNA)の構造をしています。二本鎖RNAのうち、一本はパッセンジャー鎖、もう1本はガイド鎖と呼ばれています。二本鎖RNAを細胞に導入すると、パッセンジャー鎖は分解され、ガイド鎖はRNA-induced silencing complex (RISC)と呼ばれるタンパク質複合体に取り込まれ、配列特異的な遺伝子 のサイレンシングであるRNA干渉(RNA interference; RNAi) が発生します。その結果、標的mRNAは分解し、RISC複合体は、次の標的mRNAに結合しRNA干渉が発生していきます。mRNAが分解されることにより、たんぱく質の翻訳が阻害できます。


開発リスク

mRNAを標的とする場合、DNA/RNA結合により、ターゲットとなるmRNAを分解しますが、標的配列以外に結合し(オフターゲット)、毒性が出てしまうことがあります。ヒトのmRNAは動物とは異なるため、動物試験では評価には限界があります。そのため、in silico解析、in vitro解析、ヒト肝キメラマウスを用いた評価が必要となります。更に、毒性を低減させるために、適切な塩基長を設定し、in silico解析、in vitro解析が重要となってきますが、多数の配列設計から最も安全で、効果のある化合物を、すばやくスクリーニングする手法を確立しなくていけません。